「曇天」永井荷風

純文学

秋の寂しい夕暮れ時。濁った重苦しい雰囲気にしか出せない深い染み入るような美しさ。憂鬱にしか宿らない強烈な色気。曇天の寂しい秋の夕方に、コーヒーを片手にくすんだ街を見ながらゆったりと味わいたい、そんな作品です。

寂しさにある美しさ。もののあわれ

雨の街、灰色、落ち葉、廃墟、夕暮れ、静寂…

退廃的な美しさ。ノスタルジック。もののあわれ。散り際の桜に美を見出すような日本人の独特な美的感覚を美しい文章で綴っています。

その世界観に引き込まれる。見事な情景描写です。

忙しない日常をただ過ごすか、そこにドラマを見出すか

本の内容としては、“昼過ぎに友達の家を訪問し、その帰りに少し散歩をした”というわずか9ページほどの作品です。ここにこれだけの世界観を感じることができる。これが純文学の凄さだと思います。

雨の日のカフェでゆっくりと読みたい、そっとバックに忍ばせておきたい、そんな本です。

 

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